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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)239号 判決

本件意匠(〔編註〕意匠に係る物品は水道用弁室の口枠)は、平面よりみて、やや横長の長方形状の内部を中空状とした枠体状とし、該枠体の周囲側板部を横方向にほぼ三等分し、そのうち上辺及び下辺にフランジ部を突設して、その中間部に帯状に台形状の浅い凹みを形成し、枠体フランジ部の四すみはこれをほぼ四五度に切截し、この切截によつてできた平面に表われる辺の長さを、枠部分の一方の厚み一に対し、ほぼ〇・七七となるようにし、また、枠体の上端の周縁部の内側は、前記中空状の部分を除き全体にわたつて低い平坦な凸面となつているものであり、他方、下面は、反対に周縁部の内側が切截されており、該枠部分の一方の厚みと枠全体の平面長辺の長さとの比をほぼ一対八とし、さらに、前記枠体の内側は、上方より下方に向つて僅かに広く傾斜状に形成してなるものであることが認められる。

また、成立について争いのない甲第二号証(引用意匠を表わした実用新案公報)によれば、引用意匠は、やや縦長の長方形状の内部を中空状とした枠体状とし、該枠体の左右側板部を横方向にほぼ三等分し、そのうちの中央には、細長い台形状の浅い凹みをその辺の長さのほぼ〇・六三の割合の長さにわたり表わし、枠体の上端の周縁部の内側は、前記中空状の部分を除き全体にわたつて低い平坦な凸面となつているものであり、他方、下面は、反対に周縁部の内側が切截されており、該枠部分の一方の厚みと枠全体の平面長辺の長さとの比をほぼ一対八・三としたものであることが認められる。

本件意匠と引用意匠とを対比するに、両者は、平面よりみて、一辺が他辺に比しやや長い長方形状の内部を中空状とした枠体状とし、該枠体の周囲側板部の横方向の中間部に細長い台形状の浅い凹みを形成し、枠体の上端の周縁部の内側は、前記中空状の部分を除き全体にわたつて低い平坦な凸面となつているが、下面は、反対に周縁部の内側が切截されている基本的構成において共通しており、ただ、本件意匠においては、(一)枠体フランジ部の四すみをほぼ四五度に切截し(以下「四すみの切截部」という。)、(二)枠体の上辺及び下辺のフランジ部の中間の台形状の浅い凹みが、枠体の周囲四側面に帯状に形成され(以下「台形状の凹み」という。)、(三)枠部分の一方の厚みと枠全体の平面長辺の長さとの比が、ほぼ一対八とされ(以下「枠の厚みと長辺の長さとの比」という。)、(四)枠体の内側が上方より下方に向つて僅かに広く傾斜状に形成されている(以下「枠体の内側の傾斜」という。)のに対し、引用意匠においては、(一)の「四すみの切截部」がなく、(二)の「台形状の凹み」が、枠体の左右側板部のみに設けられ、その辺の長さのほぼ〇・六三の割合の長さであり、(三)の「枠の厚みと枠の長辺の長さとの比」が、ほぼ一対八・三であり、(四)の「枠体の内側の傾斜」がない点で互いに相違していることが明らかである。

しかしながら、右(二)の「台形状の凹み」については、結局、台形状の凹みが周囲側板部の全周に形成されているか、左右両側板部の各辺の長さの〇・六三の割合の長さにわたり形成されているかの差異であり、この差異が本件意匠を引用意匠に対比し類似の域を脱せしめるほどのものとは認められないし、また、(三)の「枠の厚みと長辺の長さとの比」及び(四)の「枠体の内側の傾斜」については、その差異は、いずれも軽微なものであり、前認定の基本的構成の中の微差にすぎない。(一)の「四すみの切截部」の有無の差異についても、その四すみを、本件意匠のように切截するか、たとえばすみ丸状にするかなど、広く一般に存する機宜の形状にすることによつては、すでに四すみを直角状にする引用意匠が存する以上、これに特段の意匠ないし意匠の要部の存在を認めることはできない。原告は、四辺形の一辺を山形に形成したような切截面(本件意匠の正背両面図及び左右両側面図に表われているもの)が顕著であるというが、長方形状のものの四すみを四五度に切截し、切截部を形成することは通常行なわれることであるから、本件意匠におけるように、周囲側板部の前記台形状の浅い凹みの底部に一致するよう四すみを切截し右のような切截面を表わしても、看者に特段顕著な印象を与えるものとは認められない。

そして、以上の諸点をすべて考え合せても、両意匠を全体として対比するとき、本件意匠をもつて、引用意匠とは非類似のものとすることはできない。

原告は、この種物品における登録例を挙げて種々主張するところがあるが、これらが本件における類否の判断を拘束するものでないことはいうまでもなく、いまだ右判断を左右するに足りない。

以上のとおりであつて、本件意匠を引用意匠に類似するとした本件審決の判断は相当であり、その取消を求める原告の本訴請求は、理由がないから、これを失当として棄却する。

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